映画「剣岳 点の記」は観る予定にしている。主演、香川照之。前に、なかにし礼原作、常盤貴子主演の「赤い月」でもいい演技をしていた。市川猿之助と浜木綿子の間に出来た彼はフランス語の堪能な東大OB。大きな役者になってるので、作品を見る前から安心してるよ。
で、剣岳。私がピークに立ったときは、曇り空だったことを覚えている。
実は、この山にはほろ苦い想い出がある。当時を思い出しながら書くよ。
確か、11年前、夏休みの連続休暇を使って、北アルプスの白馬岳、唐松岳、五竜岳、立山、剣岳と、オマケで荒島岳と白山にテント泊で登った。当時は凄く長い距離を歩いていて、体力的にも強かったんだと思う。写真は剣岳の難所、カニの縦這いなんだけど、結構、気の抜けないプチ岩登りがあったりで、今は、あんまり行きたくないなーって感じ。当日は、早々にピークを勝ち取り、日本三大尾根の1つである早月尾根を下り、富山県滑川に辿り着く予定だった。しかし、どうしたことか私の気まぐれで、立山の室道方面に復路を変更して、下っていた時のこと、コワーイ山岳事故に遭遇したのだ。ブラインドで見えなかったものの、これから山頂に向かう岩場の向こう側にいるパーティーの1人が滑落したらしかった。当然、悲鳴が聞こえ、騒々しかった。離れた場所から、私はメンバーの1人に声をかけた。ここから下りで2時間半かかる剣沢に駐留している富山県警山岳警備隊を呼んでくる旨を伝える。「お願いします」と彼。
当時、ケータイは今ほど普及していなかった。急がねば。背中のザックの重さは不思議なもので、全く感じなかった。岩場続きの尾根を駆け下りる必死の形相の私。1時間少々とゆーありえない速さで剣沢の詰所に着き、「大変だー」と駆け込んだ。奥の暗がりの中からジャージ姿の隊員がスーっと出てきた。いずれもギョロリと真剣なまなざし。
彼らは即、地図と灰色の紙を出し、事故の場所、事故者の状態、私の名前と連絡先を聞き、3分ほどで3人の隊員が現地に向かった。レスポンスが早く、頼もしい。「結婚するならこの男」ってゆー感じがしたよ。私は詰所の椅子にストンと身体を預けた。心地よいエネルギーゼロの状態。
後日、富山県警山岳警備隊から私に電話連絡があった。事故者は50代の女性。一命は取りとめたものの、半身不随になってしまい、車椅子生活を余儀なくされるという。関係者や事故者の家族からの連絡は、その後、一切なかった。
剣岳、2998m。
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