フェイスブックフレンドの竿ッピーから三島由紀夫の「午後の曳航」を推薦されたのでブックオフで買っておいたものの、結局、読み終えた場所は韓国の仁川国際空港8番ゲートであった。あらすじはこうだ。
横浜の舶来品を扱うブティックのマダムが船乗りに惚れてしまい、ひょんなことから家に引っ張り込んでセックスに及んだ。そして、隣室の壁の穴から、中学生の息子がその一部始終を見てしまう。死んだ父に大した愛情は無かったものの、彼は複雑な思いに囚われる。船乗りは数ヶ月後、彼の新しい父になるという。彼は友人達に相談し、この世で最も醜悪な存在は父親だとゆー結論を導き出し、父になる予定の船乗りを山に誘き寄せ、毒入りの紅茶を飲ませて殺害してしまう。ここで話は終わる。
ただそれだけの話なのだが、文中の登場人物たちの言葉が示唆に富んでいて、それらを三島自身が的確に操り、それぞれのシチュエーションに完璧な解説を加えている。奇妙な躍動感があってこれがまた面白いのだ。「潮騒」や「金閣寺」で世に問うた純文学的高尚さは、この作品から嗅ぎ取ることはできない。しかし、それを捨てても余りある現実に対する倒錯の何と痛快な言葉の羅列であろう。魔法のよーな三島ワールド。世界の三島。
この作品を読んだことのない向きには、一読をオススメする。読んで悔いが残るとゆーことは500パーセントないと断言してもいい。以上。
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