2012年6月10日日曜日

キリマンジャロの雪。

勝手知ったる神保町交差点にある岩波ホールで、この作品を上映初日に観た。岩波ナントカってゆー年をとった岩波家ご令嬢の舞台挨拶があり、プレリュードは最高潮に盛り上がった。 で、作品はどうだったかとゆーと、これがまた最高なのであった。題名の「キリマンジャロの雪」は、ヘミングウェイの短編小説から引っ張ったものではなく、1966年にフランスで大ヒットしたパスカル・ダネルのシャンソンのタイトルであったのだ。私は、当日までそのことを全く知らずにいたのだから、ある意味、凄いでしょ? さて、舞台はマルセイユ。港湾労務者を束ねる組合委員長のミシェルは会社側から20人のリストラを余儀なくされ、その20人のうちの1人に自分を入れてしまうほどの正直者だ。やさしい妻はその事実を簡単に受け入れてくれた。ほどなく、退職慰労会も兼ねた結婚30周年のパーティーが催され、夫妻は息子達からのプレゼント、キリマンジャロ行きの旅行券を受取る。束の間の幸せ…。その数日後、2人は自宅で友人夫婦とカードゲームに興じている最中、数人の強盗に遭う。多額の現金と旅行券を奪われ、ミシェルは左腕を骨折させられてしまう。途方に暮れる2人。そして、憂鬱な日々の後、ミシェルは街中で、ひょんなキッカケから犯人を探し当ててしまう。ホシは自分達のパーティーに招待した元同僚の若い男で、リストラされた20人のうちの1人であった。早速、警察が動き、彼は共犯者とともに逮捕されたが、若い男には幼い2人の弟がいたのだ。彼は生活のために犯罪を犯した。ほどなく、慈愛に満ちたミシェル夫婦が幼い2人の面倒をみはじめたことに、私は驚かなかった。しかし、盗品として戻ってきた旅行券を払い戻したミッシェルが、その金を、そっくりそのまま幼い2人に渡してしまったことには、正直びっくりした。そして、その流れで、彼らを引き取り、一緒に暮らしてしまうに至っては唖然とするより他はなかった。実の息子達はミシェル夫妻のこの行動に怒り心頭だ。しかし、この夫婦は「これが私達の生き方なのだ」と再確認をする。 結論。人生はお金ではなく、愛なのだ。南仏のマルセイユで繰り広げられたこの物語のどこにも「キリマンジャロの雪」は見られなかった。ただ、私はそれ以上に崇高な人間愛に触れ、珠玉の名作に出逢えた喜びにうち震えていた。ありがとう。

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