2010年1月1日金曜日

北方謙三の歴史小説。


読み終わりました、「楠木正成」。読後感を一言でゆーと、後醍醐天皇が嫌いになり、北方謙三が好きになったとゆー感じかしら。
鎌倉幕府の理不尽さに辟易していたアンチ武士で、商人兼農民の楠木正成は、倒幕の思想を持っているとゆー点で「悪党」と称されたが、その実は、インテリやくざだったのかもしれないと個人的には思っている。武士が領地とゆーか、地べたや役職を欲しがったのに対し、正成はズバリ行政権を押さえるだけで満足できた侠客だ。才覚の無い武士に領地だけを与えても、宝の持ち腐れになることを知っていた正成は、武士から権限を奪い、朝廷による政を実効性を持ってサポートできるシステムをつくるために立ち上がった。それは、国の有様を抜本的に改善するための革命でもあった。圧倒的な劣勢においても、「無様」とゆー、名よりも実をとった戦略・戦術により、戦の大部分を支配した。しかし、焼き上がった猪肉の一番おいしいところを、源氏の流れをくむ武士、足利尊氏にパクっと持っていかれてしまうアンラッキー。正成の絶妙のスルーパスに右足を合わせただけの尊氏(途中出場)が決勝点を決めたのだ。
隠岐に流されていた後醍醐天皇を、建武の新政とゆースタートラインに立たせた功労者であったにも拘わらず、天皇の正成への評価は低かった。度重なる理不尽…。
権謀術数に秀でた足利尊氏を活かし、結果的に助け、彼の後塵を拝し、後手を踏んだ。
しばしの時を経て、敗走し、九州に逃げ、態勢を立て直した尊氏を迎え撃ったのは、神戸の湊川近くの会下山に陣を構えた正成その人であった。
北方謙三は、この湊川の合戦を全く書かずに、筆を置いている。うーん、これぞハードボイルドなんだなぁ。この、スペースには読者自身が筆入れすべきなんだな。本当に、よく出来た作品だ。感動した。

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