2010年12月8日水曜日

或る夜の出来事。


昔の映画でクラーク・ゲーブルとクローデット・コルベールが演じた「或る夜の出来事」って、なんか愉しいストーリーだったよーに記憶してるけど、今日は映画の話じゃなくて、或る夜、私に起こったちょっとした出来事について綴る。
2日ほど前の夕方、松戸の自宅に帰った私は、犬の餌が少なくなっていることに気がついた。私もそうだが、食べ物は犬の生命線を司る。無いと生きてはいけないわけで、早速、家から自転車で10分弱のペットショップに、スーツ姿のまま買いに行った。ほどなくして店に着き、6kg入りの餌を持ってレジまで。右のズボンのポケットから、いつものよーに札入れを取り出そうと手を突っ込んだ。刹那、頭の中が真っ白に!財布が無いのだ。自宅を出るときに間違いなくあった筈のそれが、忽然と消えていた。
何とゆー不運!よりによってその日の所持金は、いつもの100倍は裕に超えていた。
何故かしら12月は、お金が傍らにあるもので、私にツキがなかったのか…。2秒ほど呆然とした後、私は意を決し、踵を返した。
「探すのだ、草の根を分けても捜すのだ、真剣に、今、できるだけの手を打つのだ!」。私の中の本能がスイッチをオンにし、パワー全開だ。自転車に乗り、逆方向に低速で、路面を凝視しながら進む。私の鬼気迫った表情に、道すがらの人は恐れおののき道をあける。「ガルルル、絶対に見つけ出すのだ!」。うめき声にも似た小さな叫び声を発しながら、私の探索は続く。不安は全く無かった。探すことにのみ集中していた。ただ、獣のよーな視覚と臭覚が、私を包んだり掴んだりして離さなかった。
数分後、獲物に出くわした。瞬間、私の心に喜びのタイマツが灯をともした。暗い歩道の真ん中で正三角形にフィクッスされた私の札入れが、挑発的な態度でこちらを見上げているのが目に入った。
月の夜。無風。車道を往く車のエンジン音さえ、何故かしら聴こえない静寂のなか、私は財布の中身をコンファームし、少しまどろんだ。
こーゆーパターンの幸せも、確かに存在するのだ。或る夜の出来事。
かつて、私の人生において、これほどまでに集中したことがあっただろうか?

0 件のコメント:

コメントを投稿